ただの読書ログ

ひたすら読んだ本をアップしているだけの日記です。

難解な本を読む技術 (光文社新書) 高田 明典


難解な本を読む技術 (光文社新書)

先月は、Kindle読み放題にハマり、50冊近くも「読んだ」と豪語していたわけですが、本当に意味のある時間を過ごしたのだろうか?なんとなく、むなしさも感じていました。その理由は、読むべき本を、しっかり「読んでいない」という自責の念です。健全な食生活というより、インスタント食品を食べまくった一か月。そんな気もします。速読も良し悪しです。

振り子の法則、よろしく、濫読・速読から、精読に大きく触れながら、戻ってきました。読書は「技術」ですし、気軽なものではないことが分かる一冊です。フランシス・ベーコンの名言「ある本はその味を試み、ある本は呑み込み、少数のある本はよくかんで消化すべきである。」を思い出します。

最近は、流し読みばかりで、歯が無くなってないかな?と自問させられます。

印象的なコメント

付録には、フーコーやフロイト、ラカン、ウィトゲンシュタインなどの「読み方」が挙げられています。いわゆる「思想系」の書籍の読み解き方です。私も過去に独学術 (ディスカヴァー携書) 白取春彦 - ただの読書ログ(ヨシ・ノリハラ)を読んでからは、古典にチャレンジしていますので、学べる教訓が多いようでした。

「読むべきでない本」を見分ける

「「読むべきでない本」を読んでしまうことによる時間の損失は、私たちが思っている以上に甚大です。それは、単にその本を読むのに要した時間だけではなく、その本の悪い影響から脱するために必要となる時間も含まれるからです。」


「頭にはできるだけ「ゴミを入れないようにする」ことが肝要なのであり、いったんゴミが入ってしまったら、それを排除するために多大な労力と時間が必要になってしまいます。「ダメな本なら読まないほうがいい」というのでは不十分で、「ダメな本を読むのは、百害あって一利なし」です。世の中には、ダメな本による影響で、回復不可能なダメージを受けている人がたくさんいます。「本を選ぶのに選びすぎるということはない」というほうが圧倒的に正しいと言えます。」

本を読むのは著者と語り合うようなことです。良い影響を受ける師もいれば、できれば、接したくないような人もいることでしょう。無思慮になんでも頭の中に取り込んでいくのは、愚かしいことです。何にせよ、読んだもの、接したものの影響を受けるのが人間です。私も、ビジネス書を読むことが多いわけですが、油断すると、すぐにチープな自己啓発書を読んでしまいます。(読後感はスナック食品を食べたときに似ています。その瞬間はとてもおいしいのですが、いくら食べても、まだ欲しいという感じ。あの満たされない感じがあるのです。)


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読書の中には「選書」(本の選び方)が含まれると、著者は説きますが、まさにその通り。良くない本を熱心に読もうとするくらい愚かしいことは無いのです。そして、今、自分の読書がそのようになっていないか?自問させられました。(なってるよ)

読みたいときに読む」「読みたいところから読む」という原則

「自分が知りたいこと」が議論されている本を、最初から購入すべきです・・・自分の興味の対象から離れてはなりません。まず「知りたいこと」が書いてある本から読み始めるのが、最も効率的な方法です。もしも、読み始めた段階でわからない概念や用語に遭遇したら、入門書の必要性が生じるわけですから、そのときに、もう一段階広い分野(たとえば「経済学」など)の入門書や概説書を買えばよいといえます。人は、必要な知識を習得するのは得意ですが、必要ではない知識を習得するのには、大きな困難を感じるという性質を持っています。「必要になったときに、必要な知識を習得する」というのが最も効率的な方法です


「人は、それが自分の役に立ったり、自分が抱えている問題を解決することができたりするときに、本に書かれた内容をよく吸収することができます。自分とはあまり関係のない問題について書かれている本の内容を理解することは、容易ではありません。端的にいうと、それはつまらない作業であり、長い時間集中して続けることが難しくなりますし、たとえ読み続けたとしても理解の度合いは低いものとならざるを得ません。」

著者が挙げている例を参照すると、自分の「分野」を見極めていき「消費経済学」に関心があるということが分かったのに、まずは基礎からと思い「経済学」のテキストに手を出してしまう危険があります。これは、日本人が積み上げ式で学んできたからですが、このような学びのアプローチは、結果的に退屈を生んでしまいます。たとえ、高度な領域の学問であったとしても、本気で自分が知りたいと思ったのであれば(分野を見極めるというのも、時間がかかることですが)そこに踏み込むのが正しいことです。

外資系コンサルの山口氏も、コンサルなりたての時代に、コンサルなら読むべき100選のような書籍を読破しようとしたものの、挫折した、というような話を書いていました。しかも読んだ内容はほとんど覚えていないというのです。
yoshinorihara.hateblo.jp

私も、大学時代に、この棚をすべて制覇するぞ!みたいな読み方をしていましたが、とんでもなくアホです。「今、知りたいこと」「必要なこと」でなければ、全く吸収できないということを身をもって経験しました。山口氏が好んで引用する名言ですが・・

「食欲がないのに食べることが健康に悪いのと同じように、欲望を伴わないのに本を読むのは頭脳をむしろ損ない、記憶にも残らない。」 レオナルド・ダ・ヴィンチ

まさに、というところでしょう。気を散らして多ジャンルを濫読してよいという意味ではなく、自分の「本当」の関心から逃げないようにしたいものです。その面で言うと、読書の技法とは少し違うのですが、必要に迫られた勉強というのは、実に身になります。思い出すのは、私と父で経営していた会社が倒産寸前の時でしたが、必要に迫られて読んだ知識は、相談に行ったどのコンサルタントや、どの担当者よりも、深く実践的なものでした。追い詰められていましたからね。サラッと表面をなぞるような読み方はしていませんでした。

ひどく追い詰められるような経験をしながらも、おお!自分の知識量も、なかなかだなぁと感じながら話していたのを思い出します。超、必要に迫られていたから根付いたわけですね。余裕ができると、また、無意味な「お勉強」になってしまう自分の傾向に気が付いているので、早速正してまいりたいと思いますね。

「同化読み」で名著をリスペクトする

著者は、本の読み方として「同化読み」と「批判読み」を対照させています。そして、基本的に名著と呼ばれるような書籍は「同化読み」を行うように勧めています。同化読みとは「その本の内容を、その著者の方針にしたがって理解しようとする」という態度」のことです。特に名著にあたる場合はそのようにありたいものです。

「名著とされているものを読む場合、まずは同化読みをすることをお勧めします。歴史の洗礼を受け、長い間多くの人々に読まれて一定の評価を受けてきたものが名著と呼ばれている本であるわけですから、やはりそれに敬意を表するという意味でも同化読みすることが好ましいと言えるでしょう」


「難解本を読む場合には、とりあえずは「同化読み」を試すのがよいと思われます。なぜなら、批判読みをしている場合には、疑問点や不明点が自分の無理解に由来するものである場合でも、それを著者の誤謬だと考えてしまう可能性が大きくなるからです。ただ、同化読みでは、不明な点や疑問点が生じた場合でも、それを批判的に読むのではなく、自分の無理解のためだと考えて一旦は放置しておく、という態度が必要となります。」

この本の中には読書ノートの取り方や、読み方の技術はいろいろ出てきますが、私個人としては最も大事なのは「同化読み」ではないかと考えています。結局、名著と言われるような本、何百年も読み継がれてきたような本は、無勉強に読みこなせるようなものではありません。自分のレベルが低いために、今、理解できていないということも多いと思います。しかし、この本は駄本だ!というように、断じてしまうリスクがあると思います。実際にそのような人は多いと思います。精読すべき本を、一度、通読しただけで断じてしまう。これはもったいないことです。

理解しやすい本ほど、二度、三度読もうという気持ちはなくなるものです。味わい深い本こそ、難解で、何回でも(笑)チャレンジしたくなる本です。批判読みをしてしまうと、その本から学ぶチャンスを減じることになります。名著の歴史に敬意を払いつつ、まずは、素直に「学ぶ」心で難解本に向かい合うべきでしょう。

まとめ

とても良い本でしたし、現在の軽薄な読書スタイルを戒められた気がしました。と、同時に、どれほど読書というのが価値あるものなのか?ということに感動します(読む本によりますが)。

「たとえ1冊であっても、その内容をある程度理解するということは、たいへん重要な意義を持っています。名著を理解するということには、世界の見方やものの見方の劇的な変化が伴います。多くの人が生涯かけても絶対に到達できない地点に立って、この世界を見ることができるようになるわけですから、その意義は尋常なものではありません。」

時間は限られていて、たとえば、平日なら2-3時間を取り分けるのが、限界です。その時間をビジネス書を4-5冊読んで過ごすか、1冊の名著に、読書ノートを片手にしっかり取り組むかで、人生は全く変わるはずです。私の読書スタイルも、改めてイチから出直したいと思います。

是非、手に取ってお読みください。インパクトのある一冊です。


難解な本を読む技術 (光文社新書)

内容

フロイトの「無意識」、デリダの「脱構築」、ドゥルーズの「襞」、フーコーの「生権力」、ナンシーの「共同‐体」、ジジェクの「否定の否定」…これまでに何度も齧っては躓いていた、錚々たる哲学者たちの思想を理解するには、どうすればいいか。本書はいわゆる難解な「思想書」を、読んで理解するために必要な技術を紹介。前半の章では、本のタイプの分類や、選書の仕方などの準備段階から、実際に本を読む方法と、同時に記録する「読書ノート」の取り方といった実践まで、基本的な読書の技術を学びます。そして、後半の付録には、学生による「読書ノート」記入例と、「代表的難解本ガイド」をつけましたので、読書の技術を具体的に理解できるようになっています。